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Apr 25, 2024 | 住まいの知識
高気密高断熱住宅はカビが生えやすい?それ、誤解です。
湿度の高い日本では、カビの発生は避けられない問題の一つです。カビは建物の寿命を縮めるだけでなく、アレルギー性鼻炎やシックハウス症候群など、住む人の健康にも深刻なダメージを与える可能性があります。
近年、省エネ住宅として注目を集める高気密高断熱住宅ですが、一方で「カビが生えやすい」という懸念もよく耳にします。果たしてこれは真実なのでしょうか?
今回は、高気密高断熱住宅とカビの関係について、その仕組みから解説します。
誤解と真実を解き明かし、快適で健康的な住まいを実現するためのポイントを探っていきましょう。
高気密高断熱住宅とは?
高気密高断熱住宅とは、気密性と断熱性を高めることで、室内の熱損失を抑え、快適な住環境を実現する住宅です。
具体的には、以下の2つの要素を満たしています。
・気密性:外部からの隙間風を防ぎ、室内の空気を逃がさない性能
・断熱性:壁、屋根、床などの外壁に断熱材を施工し、熱の出入りを抑える性能
これらの性能を向上させることで、冬は暖かく、夏は涼しい室内環境を維持し、冷暖房費の節約にもつながります。
カビの発生条件とカビによる健康被害とは
カビは、私たちの身近な場所でも多く存在する菌類の一種です。湿気や栄養のある場所を好み、増殖します。
カビは、以下の3つの条件が揃うと発生しやすくなります。
・温度:カビは、20℃~30℃の温度帯で最も活発に増殖します。
・湿度:カビは、湿度70%以上になると発生しやすくなります。
・栄養:カビは、食品はもちろん、ホコリや石鹸カスなども栄養源として増殖します。
カビが健康に及ぼす影響
カビ自体は目に見えない胞子で空気中に漂っており、これを吸い込むことで健康被害を引き起こす可能性があります。
カビによる健康被害の主に以下のものが挙げられます。
アレルギー症状
気管支喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を悪化させることがあります。
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、皮膚のかゆみ、発疹などの症状が現れます。
感染症
免疫力が低下している人や、乳幼児などは、カビの胞子を吸い込むことで感染症にかかることがあります。
真菌性肺炎、皮膚糸状菌感染症、カンジダ症などが代表的な病気です。
シックハウス症候群
カビを含む有害物質が室内に蓄積することで、頭痛、めまい、倦怠感、吐き気などの症状が現れることがあります。
その他
カビの中には、マイコトキシンと呼ばれる毒素を産生するものがあり、これが原因で発がん性などの健康被害を引き起こす可能性も指摘されています。
カビの影響を受けやすい人
カビは主に免疫力が弱い方に悪影響を及ぼします。特に影響を受けやすい方は以下の方が挙げられます。
・乳幼児
・高齢者
・免疫力が低下している人
・呼吸器疾患のある人
・アレルギー体質の人
カビは、私たちの健康にさまざまな影響を与える可能性があります。
カビが生えやすい環境を作らないように心がけ、カビを見つけたらすぐに除去することが大切です。
高気密高断熱住宅とカビの関係:誤解と真実
高気密高断熱住宅とカビの関係について、よく耳にするのが「カビが生えやすい」という誤解です。
確かに、換気が不十分な場合や、結露が発生しやすい環境であれば、カビが生える可能性は高くなります。
しかし、これは断熱性能が低い、または不十分な場合に限った話。
高断熱高気密住宅は、正しい施工・設計と管理が行われていれば、むしろカビが生えにくいというメリットがあります。
高気密高断熱住宅におけるカビ対策
隙間がなくいつも快適な室温を保つ高気密高断熱住宅はカビの温床になりそうだと考えてしまいますが、それは大きな誤解です。
高気密高断熱住宅は、以下の2つの理由からカビが生えにくい構造になっています。
・結露の発生抑制:断熱性能が高いことで、外気温の影響を受けにくくなり、結露が発生しにくくなります。
結露はカビ発生の大きな原因となるため、その抑制は効果的な対策となります。
・計画的な換気:気密性が高い住宅では、計画的な換気が重要になります。
適切な換気システムを導入することで、室内の湿度をコントロールし、カビの発生を防ぐことができます。
高気密高断熱住宅でカビを防ぐためのポイント4つ
基本的にきちんと設計・施工された高気密高断熱住宅であれば、基本的にカビは生えにくいとされています。
ただし、カビの発生は住む人の「暮らし方」が大きく影響する面があります。
そのため、高気密高断熱住宅で快適に暮らすためには、以下のポイントを意識したカビ対策が重要です。
適切な換気
24時間換気システムなどを活用し、室内の湿気を常に排出することが重要です。適切な湿度を維持しましょう。
結露対策
窓のサッシや浴室などの結露しやすい場所には、結露抑制テープや断熱材などを設置しましょう。
カビが発生しやすい場所の清掃
浴室やキッチンなどの水回りは、カビが発生しやすい場所です。こまめに掃除を行い、カビの繁殖を抑えましょう。
さらに、これらのエリアでは、換気扇の使用や除湿機の設置が効果的です。
家具の配置
壁と家具の間に隙間を設け、空気の流れを確保しましょう。
高気密高断熱住宅は施工技術の高い信頼できる工務店で建てる
これからの住宅にとって、しっかりとした気密性と断熱性は必要不可欠な性能です。
断熱性能は設計段階で調整できますが、気密性は施工技術にかなり左右されるポイントです。
建築中と完成後に気密性能を測定し、目標とする気密性能を達成しているかを確認する「気密検査」という検査があります。
気密検査に法的義務はありませんが、新築時にすべての建物に対してこの検査を行っている工務店であるか、という点も工務店選びの際の決め手になるはずです。
まとめ
高気密高断熱住宅は、正しく設計・施工され、適切な換気とカビ対策を行うことで、快適で健康的な住まいを実現することができます。高断熱性能による結露抑制と計画的な換気システムが、カビの発生を防ぐ鍵となります。
また、高断熱高気密住宅を建てる際には、信頼できる建築業者を選ぶことが重要です。適切な知識と技術を持った業者は、カビのリスクを最小限に抑えるための設計と施工を行います。また、住宅の気密測定を行い、高い気密性能を確保することも、カビ対策には欠かせません。
高気密高断熱住宅を検討されている方は、今回ご紹介した内容を参考に、カビ対策についても十分に検討することをおすすめします。